さかさまの世界
竹本健治『新装版 匣の中の失楽』(講談社文庫、2015年)★★
第4の奇書と呼ばれる本作、著者のデビュー作。
特に『虚無への供物』に近い印象だが、衒学的なところは『黒死館殺人事件』的な要素を感じる。現実と架空が混在するのは『ドグラマグラ』の影響か。
ミステリー好きの集まり「ファミリー」の曳間が殺される。しかもナイルズという綽名の少年が書いた実名小説『いかにして密室はつくられたか』の筋書き通りに。
次々と「ファミリー」が殺される中、驚くべき犯人像が描かれる。
ただ、動機が弱い気がする。
小説内小説の架空の世界と現実が入り混じるので、注意深く読まねばならない。
本編自体は、いわゆる3大奇書に並べられる水準ではないが、読む価値はある。
むしろ、収録された短いサイドストーリーの方が興味深い(本編のからくりの始末をつける形?)。