大学教授、大活躍

エドマンド・クリスピン『お楽しみの埋葬』(早川書房、1959年)★★★

 

英文学専門の大学教授フェンが選挙運動のために地方に降り立つ。女性の毒殺、警官の刺殺、事故にあい入院している患者の殺人未遂と、次々事件が起きる。同時期に精神病院から患者が脱出し、行方知らずである。はたして一連の事件の真相は…。

脱走した精神病患者が犯人説、という読者から見るとどうみても誤誘導なのは置いといて、ミステリとしての謎解きは良くできている。情景描写も簡潔で、人物描写もわかり易い。ところどころに文学の名文句が出典とともにちりばめられていて、英文学専門の主人公という背景とマッチしている(以前紹介した『バイバイ、エンジェル』より馴染んでいる)。最後の選挙演説の長台詞はご愛嬌?

残念なのは、フェンの謎解きパートが短く、すぐ犯人追跡劇に移ってしまう終盤。もう少し、教授の名推理部分があっても良かった。

絶版なのが惜しい。