2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

雪の降る日は殺人

綾辻行人『霧越邸殺人事件 上〈完全改訂版〉』(角川書店、2014年)★★★ 初出は1990年。著者曰く「プロット、ストーリー、エピソードには変更を加えないものとして、主に文章面での細やかな“最適化”に努め、完成度とリーダビリティの向上を図った」版。 雪深…

正しい社会とは

桐野夏生『日没』(岩波書店、2020年)★★★ 過激な内容の小説を書いたということで、国家組織だという通称「ブンリン」に呼び出され、あれよあれよという間に囚われの身となったマッツ夢井。スマホは圏外、食事も限られているという劣悪環境の中、施設の所長…

魅惑の密室

有栖川有栖『新装版 46番目の密室』(講談社、2009年)★★★★ 大学の助教授日村英夫と友人であり推理小説作家の有栖川有栖が活躍するシリーズの第1弾。日本のディクスン・カーと称される真壁聖一に呼ばれた推理作家、編集者たちがクリスマスを過ごす。白い雪が…

古書の海へようこそ

喜国雅彦『本棚探偵 最後の挨拶』(双葉社、2017年)★★★ 第68回日本推理作家協会賞〈評論その他部門〉受賞作で、本棚探偵シリーズ4作目。 楽しい古本蒐集エッセイだが、連載中に東日本大震災が起こり、大震災と本との関わりも考察されている。 この本の中の…

青春の血潮

有栖川有栖『月光ゲーム』(東京創元社、1994年)★★★★ 火山噴火によりキャンプ場に取り残された大学生たち。下山したくても下山できない状況の中で、連続殺人が起こる。クローズド・サークル、ダイイング・メッセージと本格物のポイントをしっかり押さえつつ…

息子は何処

藤田宜永「Y₁₀(ワイプラステン)の悲劇」『ハヤカワミステリマガジン』2020年7月号★ 画家である息子が住む高級マンションの部屋で、死体で発見された画商。行方不明の息子に嫌疑がかかる。現場に残るスクラブルの駒をたよりに、主人公は息子の無罪を証明する…

これぞ本格入門!

喜国雅彦・国樹由香『本格力』(講談社、2020年)★★★★ 『ROCKOMANGA!』でお馴染みの喜国先生とパートナーの国樹さんの共著。第17回本格ミステリ大賞(評論・研究部門)を受賞したものの文庫化。 「H-1グランプリ」が中心で、喜国先生の名作紹介エッセイ、国…