2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

姉は宝石をどこに隠したか

高木彬光『神津恭介、犯罪の蔭に女あり』(光文社、2013年)★★ ド級の名作『刺青殺人事件』の著者・高木彬光の短編集。期待して読んだのだが、短編という性質のせいか、今一つ仕掛けに深みがない。1つ1つは明快な文章で書かれていてサクッと読めるのだが、読…

猫は悪くない

仁木悦子『猫は知っていた』(ポプラ社、2010年)★★★★ 1957年に発表された、江戸川乱歩賞受賞作。仁木雄太郎と妹の悦子が、下宿先の医院の家族の殺人と患者の失踪事件に挑む。筆致は軽妙でスイスイ読める。トリックはさすがに現代の推理小説の水準からすれば…

旅って、いいなぁ

アガサ・クリスティー『ナイルに死す』(早川書房、2020年)★★★★ クリスティーの旅行物の傑作。エジプト旅行の前半がわりとダルいが、船内で殺人が起きる後半のフリになる人物描写やポワロのセリフが含まれているので、読み飛ばさずに頑張って読み進められよ…

家族の物語

京極夏彦『塗仏の宴 宴の始末』(講談社、2003年)★★★★★ 『宴の支度』の後編。村の消失、怪しげな集団たち、旧作の登場人物が全て1つの筋に収束し、戦前の巨大な秘密にぶち当たる。おなじみのメンバーの挙動がおかしくなり、何を信頼すればわからない混乱の…