2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

洞窟の真実。

篠たまき『氷室の華』(朝日新聞出版、2021年)★★★ 夏休みに、氷室守をしていた父方の祖父の元に訪れた「ユウ坊」。彼は指の間の水かきに異常なほどの関心を抱き、その後の物語の進行も基本的に水かきが重要な意味を持つ。前半の人間模様の描写から、不穏な…

本質直観とは。

笠井潔『バイバイ、エンジェル』(創元社、1995年)★★ パリで起こる首切断死体、密室の爆発、森の中の死体など、連続事件。警察が攻めあぐねる中、日本人・矢吹駆が現象学の本質直観を用いて、真相に近づく。 …と書くと、典型的な本格物のようだが、いかんせ…

白い僧院を乗り越えて。

法月綸太郎『雪密室』(講談社、1992年)★★★ 美しい悪女が『月蝕荘』の離れで首を吊っているのが発見される。 しかも、発見者のもの以外、雪には足跡が残っていない。 捜査当局は自殺で事件を終了しようとするが、 休暇で訪れていた法月警視と息子の綸太郎は…