鎖の謎

浜尾四郎『鉄鎖殺人事件』(河出文庫、2017年)★★★

1933年に公刊された作品。質屋の主人が鎖で縛られた死体で発見され、その周りには切り刻まれた多くの西郷隆盛肖像画が散らばっていた。

その後、次々と殺人(未遂1件)が起こり、語り手・小川の従妹である玲子や謎の美女・澄江が事件に関係あるという疑惑が生じる。探偵の藤枝はヘマをやりながらも、真犯人を捕らえる罠を仕掛けるのだが…。

犯人は意外ではないので、推理小説を読み慣れた人は中盤でおそらく犯人がわかっていまうかもしれない。これは同著者の『殺人鬼』でも言えること。『鉄鎖』も本格物として書かれているので、途中で犯人バレしやすいのが残念。あと、鎖で被害者を縛っているが、その意味が弱く、殺人現場のおどろおどろしい雰囲気を出す為の演出の域を出ていない。

なお、澄江は藤枝の助手に採用されるのだが、これは乱歩『魔術師』(1930年より連載開始)で明智が文代を助手としたことを参考にしたのではないか?