進めば極楽退かば地獄。

米澤穂信『黒牢城』(角川書店、2021年)★★★★

時は戦国。織田を裏切った荒木村重有岡城に籠城する。城内で起こる難事件(足跡が積雪に残らない殺人、凶相を示す首、四方を警護でかためられた庵内での殺人)を、村重が、捕らえた黒田官兵衛にヒントを与えられつつ、解決していく。それと並行して、有岡城の士気がだんだん落ちていき、村重への信頼が失われていく。大将としての村重は、毛利からの救援が来ない中、官兵衛の智略に従い、起死回生の行動に・・・。

1章から3章までは別個の事件が起こり、解決に至る。しかし4章にそれらの背後にいた真犯人が明らかになる。

文章には隙がなく、グイグイ読ませる。事件の進行と有岡城の様子がリンクしていて、戦国時代という設定が活かされている。

ただ、真犯人が意外かと言うと、そうでもない(第2章あたりで、謎解き前にナントナクわかってしまう)。そのような弱点はあるとしても、ミステリーファンには必読の1冊。