白い僧院を乗り越えて。

法月綸太郎『雪密室』(講談社、1992年)★★★

美しい悪女が『月蝕荘』の離れで首を吊っているのが発見される。

しかも、発見者のもの以外、雪には足跡が残っていない。

捜査当局は自殺で事件を終了しようとするが、

休暇で訪れていた法月警視と息子の綸太郎はこれを他殺と見て、

推理していく。

 

当然読者はカーター・ディクスン(カー)の『白い僧院の殺人』を連想するし、作者自身も冒頭で「白い僧院はいかに改築されたか?」と書いている。

 

アリバイ崩しと密室の謎を同時に解き明かす箇所は上出来!

しかし、丁寧に彫琢した人物像のせいで、また、アリバイが強固なのが逆に怪しいというお約束のせいで、途中で犯人に気づくかもしれない。

それでも、密室殺人のトリックは『白い僧院』より良いと言えると思う。