スペードの意味

鮎川哲也『りら荘事件 増補版』(光文社、2020年)★★★★

避暑にきた美大生達が、連続殺人に巻き込まれる。しかも、死体のそばには、盗まれたトランプのスペードが数字順に置かれている。警察が容疑者を拘束するも、新たな殺人が起こり、事態はますます混迷する中、名探偵・星影竜三が登場する。

登場人物は多くなく、人間関係は見えやすい。細かい所に伏線が張り巡らされており、読み応えは十分。

「プレりら荘」と(出版社が)言う「呪縛再現」はどちらかと言うと、傑作『黒いトランク』(個人的には松本清張『点と線』よりレベルは高いと思う)に近いアリバイ崩し。人物の配置や舞台設定は「りら荘」のプロトタイプだが、真犯人は同じではないので、こちらはこちらで楽しめる。