変化球からの本格

 

今村昌弘『屍人荘の殺人』(東京創元社、2019年)★★★★

第27回鮎川哲也賞、ほか受賞。

大学のサークルが夏休みを利用してペンションで合宿するというお約束の始り。さほど優秀な探偵役とは思えない明智とその後輩・葉村(語り手)は、構内で実際の事件に関係する美人の剣崎と知り合い、映研・演劇部の合宿に潜り込むことに。

始まって三分の一は人物紹介と舞台設定に費やされる。ここまでは「クローズド・サークルものではないのかな」と思わせるが、肝試しを始めたところで、本物のゾンビ(!)の大群に建物を包囲され、生き残った学生と管理人は籠城することになる。そのような非常事態の中で、次々と殺人が怒る。

ゾンビが出てきたところで、ちょっと怪しい感じがして読むスピードが落ちたのだが、その後は王道のミステリーになっている。ただ気になったのは、ゾンビの包囲を利用したした連続殺人なのだが、もしこのような状態に陥らなかったら、真犯人はどのように殺人を行おうとしていたか、ちょっと気になる(睡眠薬を用意しているのだが、ゾンビに包囲されていない状況で、どのようにそれを使って全ての殺人を遂げるつもりだったか、不明)。