乱歩も脱帽?

ジョン・ディクスン・カー『帽子収集狂事件』(創元社、2011年)★★

ロンドンで帽子が盗まれ、それが思わぬ場所に置かれる事件が繰り返される。サー・ウィリアム・ビットンもまた、帽子を盗まれた一人。しかも彼の帽子が、甥の死体の上で見つかった。サー・ウィリアムが見つけたポオの未発表原稿の盗難も発生している中、フェル博士が動き出す。

解説を読むと、この作品を乱歩が激賞していたらしいが、イマイチよくわからない。解説を書いた人も、自分ではそうしないが、乱歩がカー作品のベストにあげた理由はわかったと書いている。事件解決の伏線はあるにはあるのだが、これなら『皇帝のかぎ煙草入れ』などの方が、よほどスッキリしている。乱歩は他に『夜歩く』にも好意的だが、これなら横溝正史の同名作品の方がはるかに驚きがある(乱歩のカー作品の論評より前に横溝作は出ていたはず)。

今まで読んだ中では、カーの『ユダの窓』、『黒死荘』や『白い僧院』が良い出来だと思うのだが、それはどうやら自分はヘンリ・メリヴェール物が好きなせいかもしれない。